平成16年度事業計画書
平成16年度事業計画
<基本方針>
・ 市民のための司法書士制度の確立
・ 完全自治、自律の職能集団を目指す
・ 制度改革に耐えうる研修制度の確立
・ 高度情報化社会に対応した執務環境の整備
・ 自由で民主的な結束の強固な集団を目指す
行政改革、政治改革、司法制度改革という一連の改革と規制改革の中で、私たち司法書士は司法書士制度として歴史的な転換期の中にあり、司法書士界を取り巻く環境が大きく変わりつつあることを強く感じる。
昨年4月1日新司法書士法の施行により、法務大臣の認定を受けた司法書士に、簡易裁判所における訴訟代理権が、さらに法律相談権が認められた。この改正により、国民が、マスコミが、役所が、司法書士は裁判事務の一翼を担う人材となりうるか、司法書士は司法制度改革の目的の一つである国民にとってより利用しやすい、分かりやすい、頼りがいのある司法を実現する人材となりうるのかを注視している。国民等の期待に応えることにより司法書士の世界は大きく開かれることになる。
82名の認定司法書士が誕生した。昨年度は特に多重債務問題に対応するため、二度の勉強会を開催し、相談会、事件受託に対応した。その結果は、相談者数、事件受託件数共に予想を上回るものであった。
昨年の自己破産申立件数は、11月現在22万696件を数え、増加傾向は続いている。県内においては金融機関の破綻の影響が、今後出てくることが予想されるため、多重債務問題に対応できる新たな会員の養成を引き続き実施することと簡裁の民事訴訟に対応できる会員の養成にも取り組むことが必要になる。
政府のe-japan計画のもと、行政事務手続のオンライン化が進められてきた。昨年8月からは住民基本台帳カードを利用した公的個人認証サービスも開始され、行政事務手続のオンライン申請がスタートした。この住民基本台帳カードを使用して商業登記のオンライン申請が行なわれることになる。
商業登記のオンライン庁として、関東ブロック管内において、東京法務局中野出張所、千葉地方法務局市川支局が指定され、6月21日から稼動する。11月と来年2月にも追加指定されることが予定されている。当面は商業登記の申請書のみがオンラインで申請され、添付書類は管轄法務局に持参または郵送により提出する方法でスタートすることになる。オンライン申請に対応する為の研修会の開催が必要になってくる。
不動産登記法案が3月2日閣議決定され、国会に上程された。主な改正点として、①出頭主義の廃止②登記済証の廃止とそれに代わる登記識別情報制度の導入③保証書制度の廃止と厳格な事前通知制度の導入④副本制度の廃止⑤予告登記の廃止⑥資格者代理人による本人確認制度の創設⑦登記原因証明情報の必要的添付書面化⑧登記官の職権審査権限の義務化、等が盛り込まれている。課題もいろいろあるが、「資格者代理人による本人確認制度」「登記原因証明情報の必要的添付書面化」が導入されることにより登記制度の真正担保が強化されることとなる。反面、申請代理人として95%を担っている司法書士の倫理の強化も求められることになる。この法案が成立することにより、登記制度を利用する国民にとって安全にしかも正確に登記が行われ、さらに信頼性の高い登記制度となるであろう。
総合法律支援法案が今国会に上程されている。この法律が成立することにより、現在の民事法律扶助法が廃止される。新法の第一条、目的に「……裁判その他の法による紛争の解決のための制度の利用をより容易にするとともに弁護士及び弁護士法人並びに司法書士その他の隣接法律専門職者のサービスをより身近に受けられる……」と規定されている。司法ネット構想の中で司法書士の役割は明確ではないが、法律相談のアクセスポイントとしての役割が求められるであろう。昨年度906人の相談があった実績はおおきなものであり、今後も継続して実施していくことが必要になる。
ADR基本法案が今年秋の臨時国会に上程の予定である。司法制度改革の中でADRが検討されている。司法書士ADRとして、実施方法等について具体的な検討をする時期にきている。法律が制定されたとき対応できるようにする必要がある。
ここ数年事件数が減少する中、会館の借金返済もあり、安定的な財産基盤の確立が急務となる。4年以内に登記のオンライン申請も始まり、事件数割会費を維持するか、縮小するかを含め会費のあり方を具体的に検討する必要がある。
以上、提案する。
[各部の事業]
1.総務部
・常設法律相談会の実施
毎週土曜日5名の会員で実施。
裁判関連の相談の充実をはかる。
司法ネット構想に対応するためにも重要となる。
・ 非司法書士排除活動
オンライン申請がスタートする中で、司法書士以外の申請も増加することが予想されるため継続して実施する。
非司法書士実態調査で得られた情報を基に非司法書士対象者に対して、司法書士制度を理解してもらうための広報活動を展開していく。
・苦情処理に関する事業
会員、国民からの苦情提起に対し、最初に苦情処理室で対処し、解決をはかる。
・紛議調停に関する事業
依頼者と司法書士、司法書士間の紛議が生じた場合、調停の申立てに対し解決をはかる。
紛議調停委員会が担当する。
・職業倫理の確立
法律家としての司法書士倫理の確立。
不動産登記法の改正案が成立したとき、新たな業務の導入に際し、司法書士の倫理が重要となる。日司連総会で成立した司法書士倫理を司法書士の行動指針として推進する。
・福利厚生に関する事業
・会館管理
市民への貸出、会員の夜間、土曜日の利用が多いため、管理の周知、徹底をはかる。
・報酬の調査、研究
・業務賠償責任保険に関する事業
2.経理部
・健全財政の推進
・会費の適正納入の管理
・将来の会費の有り方の検討
安定した財政基盤の確立が急務。
定額会費と事件数割会費を含め、会費の有り方を具体的に検討。委員会を設置する。
3.企画部
・会報の定期発行
2ヵ月に1回発行。インターネットなど情報通信機器の普及によりリアル・タイムの情報が取得しやすくなった。会報を、事業等を記録し保存すること並びに会員間の意見発表の手段とすることを第一義として発行。逐次執行部報告書を速やかに発行し情報の提供に努める。
・対外広報事業の充実
新聞社を中心としたマスコミ、市町村の広報誌、ホームページを十分利用して広報活動を推進する。例えば各種相談会の実施状況、多重債務者並に高齢者に対する支援活動の記事をニュースとして紹介していく。
・初等中等教育における法律教育の実施
クレジットカード、消費者問題等、高校生、一般人を対象とした法律教育を実施。
・ 情報公開に関する事業
情報公開に関する規則に基づき、ホームページに情報を公開し、逐次内容の更新を行う。
対外広報の手段として活用する。
・司法書士法律相談の拡充
常設の司法書士法律相談会の実施。
法の日の無料相談会の実施。
「相続登記はお済みですか」月間の開催。
クレ・サラ110番の実施。
・裁判事務推進のための事業の拡充
簡易裁判所関係の裁判事務、破産・特定調停・個人再生手続等債務整理及び家事事件、執行事件を中心とした裁判事務について相談、実務、講師のできる人材の養成を行う。
クレ・サラ110番の実施をとおして相談事業を行う。
・民事法律扶助制度の広報と利用促進
民事法律扶助制度の周知と利用促進を積極的に行う。
・少額裁判サポートセンターの運営
簡易裁判所の訴訟代理権取得者等を中心として運営。
常設の司法書士法律相談会を利用して、裁判事務の相談及び受託(相談者より要請があった場合)を推進する。
・(社)成年後見センター・リーガルサポートとちぎ支部への支援
登記、裁判事務及び成年後見業務が司法書士業務の三本柱となることが望ましい。人材育成、研究会及び研修会の共同開催等、側面から支援する。
・登記法改正に対する取組み
不動産登記法案の成立に向け、他団体と協力して積極的に活動を推進する。
会員が不動産登記の新たな業務に対応する上で必要な情報の提供並びに研修の充実。
研修をとおして商業登記のオンライン申請に対応する事業。
・ADR(裁判外紛争処理機関)の調査研究
司法書士のADR機関として実施可能な分野、方法等を含め調査、研究を行う。
4.研修部
・全体研修会の開催
商業登記のオンライン申請に対応するための研修、改正不動産登記法に対応するための研修、商法改正、簡易裁判所関係の裁判事務、民事再生法、成年後見法、司法制度改革、不動産・商業登記関係等を研修テーマとして年4回の開催を予定している。また、時宜にかなうテーマが生じた場合は随時開催する。
・専門実務研修会の充実をはかる
全体研修では、なかなか実務の細部にわたる研修が難しいと考えられる裁判事務、登記事務及び周辺業務に関するテーマを取り上げ、開催する。
・新人研修の実施
新人研修で当会が主体で行うのは、新入会者研修と、配属研修の2種類ある。主に倫理、執務要領、報酬を念頭に置いた内容を中心として実施する。
・補助者研修の実施
本職の受託する仕事の質が複雑多岐にわたるようになってきており、いきおい補助者の事務処理能力も高いものを要求されるはずである。登記実務、職業倫理、接客等をテーマとした研修と補助者間の親睦を加味して年1回以上の実施を予定している。
・支部研修の支援
支部研修への講師の派遣、助成金の交付等により、人的、財政的支援を行う。
・日司連主催の研修会への積極的参加
日司連主催の研修会(インターネット配信による研修も含む)への参加の努力規定が新たに定められたこと及び単位会では呼べないような講師による研修会が実施されているため、積極的な参加を働きかけていく。
・関東ブロック主催の年次研修会への積極的参加
入会して5年目の会員を対象とした倫理をテーマとした年次研修への積極的参加を働きかけていく。
・ ビデオ研修
集合研修を補完する趣旨で、日司連作成の研修用ビデオを利用した研修を実施する。
・通信研修
研修機会を拡張し、集合研修を補完する趣旨で履修単位12未満の会員に対し実施する。
[その他の事業]
1.関連団体との交流と情報収集
・法務局、裁判所との定例会の開催
・三士会、五士会の開催
・宅建協会との協議会の開催
2.登記所統廃合への対応
情報の収集、入手には十分配慮していく。廃止庁を管轄していた市町村における無料相談会の実施を法務局に働きかける。
3.土地家屋調査士会との法の日無料法律相談会の実施
当会の担当で実施。
4.支部再編の具体化への着手
宇都宮支部を具体的に検討する。